移転のお知らせ

奇行症トラベラーは本日付で下記に移転しました。
お手数ですがリンクの修正等お願いします。
今後とも引き続きよろしくお願い申し上げます。  

フカフカクラフト


奇行症トラベラー
http://blog.livedoor.jp/esyndrome/

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# by kikoushou | 2013-07-12 16:07

骨壺(壺にまつわる怪現象2)

「お待たせしました」
骨壺を抱えた男がやってきて、コーヒーを飲んでいた私のテーブルの上に置きました。男は骨壺を置くために、飲みかけのコーヒーカップを迷惑そうに肘でどかし、「ごゆっくりどうぞ」と言いました。顔が汗だくで、薄い頭髪が頭にべったりと張り付いています。
「蓋を開けておきますので、閉め忘れのないようご注意ください。閉め忘れると面倒なことになりますので」
呆然とする私を無視し、男は立ち去りました。
骨壺には細かい砂状になった遺灰がなみなみと入っており、ちょっとした空気の振動でもこぼれ落ちそうでした。
「あの、頼んでないです・・・」私は既に遠ざかった男の背中に向かって弱々しく抗議しました。すると、骨壺の遺灰が私の声に反応したかのようにフワフワと宙に舞い上がり、やがてコーヒーカップの中めがけて正確な軌道を描いてドボドボと落下して行ったのです。
私は出来るだけ冷静さを装いながら店員を呼んで抗議しました。
「この店では客に遺灰を出すのかね?」
「お客様! まずは蓋をお閉めください!」フロア係の女は突然きつい口調で怒鳴りました。想定外の強気な態度に萎縮してしまった私は「あ、すいません」などと弱々しく従ってしまうのでした。ところが、骨壺の蓋が見あたりません。
「あの、蓋はどこに・・・」
「こちらでは存じ上げません!」
私はテーブルや椅子の下を這い回りながら探しました。
「さっきまでテーブルの上にあったような気が・・・」
「こちらでは存じ上げません!」
段々腹が立ってきた私はフロア係の女に向かって怒鳴りました。
「どうしてこんなもの持って来たんだ!」
だんっ! と音がするほど強くテーブルを叩きました。
「こちらでは存じ上げません! 蓋を閉めて下さい!」
そんな問答を続けていると、私がテーブルを叩いた振動によって骨壺の中からまたしても遺灰が舞い上がりました。今度は遺灰ばかりでなく人骨の下顎の部分が出現し、続いて脊椎と背骨を引き連れて垂直に上昇しました。そのまま上昇すると、やがて天井にぶつかり、その衝撃でバラバラに砕けて再び骨壺の中へと落下しました。
こうして、店員との押し問答は1時間以上に及び、私がテーブルを叩く度に人骨の様々なパーツが骨壺を飛び出してはまた落下するという現象が繰り返されたのです。


流行に抗うオーソドックスな骨壺

骨入 骨壺 (白磁) 7寸 (本体:直径21.4cm 高さ20.7cm) 仏具 仏壇用品 仏壇 供養 お供え お盆 お彼岸
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# by kikoushou | 2013-07-08 17:10 | ◉奇行事件簿

調味料担当

注文した和風ハンバーグが届いた直後、白人の女がカートを押してきてテーブルに横付けした。
カートには調味料がたっぷり並んでいる。
「アーアーエクスキューズミーサー、アイムスパイスガールオブディスレストラン、アジューノウ、ウジュライサムスパイス?」
背が高く筋肉質の女は大声かつ早口でまくし立てた。
私のオーダーは和風ハンバーグなので、大根おろしと青じそが乗っている。追加の香辛料など要るはずがない。私は「ノーセンキュー」と答えた。
「チリソース? オケー?」女が赤いチューブをつかみ、頼んでもいないのにハンバーグにかけようとした。
「ノー! ノーセンキュー!」私は両手でハンバーグをガードし、すんでのところで制止させたが、手の甲にはチリソースがとぐろを巻いていた。私は抗議の視線を向けたが、「オニオンパウダ?」「バジール?」「ロズマリー?」女は立て続けにチューブをつかみ、よりによって香りの強い香辛料ばかりをかけようとするのだった。
「マスタード?」「キャッチャップ?」「マヨネーイズ?」今度は半固形のソースに変わった。
「ノー! アイニードノースパイス!」私は大声で叫んだ
私の発する拒否の言葉は、かぶさるように発っせられる彼女の大声によってかき消された。
ハンバーグをガードするために広げた私の手の甲は色とりどりのソースやら香辛料で落書きされたようになっていた。
私は頭に血がのぼり、ついに「ファックユー!」と叫んでしまった。
それまで私の言葉に全く耳を貸さなかった彼女がこれだけには反応した。腕組みして何事かを思案している様子だった。逆ギレして平手打ちでも飛んでくるのだろうかと身構えた。
「フアァック? ドゥユウォントゥメイクラヴウィズミイ? シュア、オフコース、オケーイ」
そう言うとパンツを脱ぎ、後ろに放り投げた。パンツは後ろの席にいた中高年男性の禿げ上がった頭の上に落下した。男性は優雅な所作でパンツをつかみ、しばらく臭いを嗅いでから上着のポケットにしまいこんだ。
スパイス担当の女は、続いてブラジャーを外し、再び背後の禿げ頭の上に乗せた。
男性はまた匂いを嗅いでからポケットにしまいこんだ。
スパイス女は私の隣りに座り込み、ぴったりと身体を寄せてきた。
「ノーセンキュー」という声は乾いた喉に引っかかり、言葉にならなかった。
もはや私には、彼女の行動を何一つ止められないのだった。
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# by kikoushou | 2013-07-08 16:55 | ◉奇行事件簿